いまさら聞けない「働き方改革」

 

最近「残業規制」や「テレワーク」など、働き方についてのニュースや話題を耳にすることが多くなったと感じませんか?これは、安倍政権が現在すすめている「働き方改革」により、社会全体がこれまでの働き方を変えていこうという動きになってきているためです。では、「働き方改革」とは、具体的にはどういったものなのでしょうか。

 

働き方改革は「一億総活躍社会」になるための手段

第三次安倍内閣が2015年10月の発足時から掲げている「一億総活躍社会の実現」というスローガン。これは、50年後も人口1億人を維持しながら、年齢や性別を問わず全ての人が家庭や職場や地域などで活躍できるような社会を目指すことを意味しています。

 

そしてこの一億総活躍社会を実現させるために最重要視されているプランが「働き方改革」であり、2016年8月には加藤勝信氏が「働き方改革担当大臣」に就任、これまでに10回の「働き方改革実現会議」が行われ、今後は2017年3月に決定した実行計画に沿って法制度の改革などが行われる予定です。

 

働き方改革をする3つの理由

最終目的が一億総活躍社会の実現であると考えるとイメージしやすいですが、働き方改革をするに至った背景には大きく次の3つの理由があげられます。

 

・1・少子高齢化による労働人口の減少

現在日本が抱える最大の問題ともいえるのが少子高齢化問題であり、実際に2012年からは毎年80万人以上というペースで生産可能人口も減少しています。このまま労働人口が減少すると経済成長率の低下は避けることができず、そのため、現在の男性の正規労働者中心の社会を変える必要があります。

 

・2・長時間労働

日本における長時間労働の問題は以前より指摘されていましたが、経済成長のためにはやむなしという傾向にありました。しかし長時間労働をなくすことで仕事の質が高まって生産性が向上し、仕事と育児・介護などとの両立が可能になることで労働人口が増え、さらには少子化への歯止めがかかるのではという期待から、長時間労働の見直しが求められるようになりました。

 

・3・ダイバーシティの推進

タイバーシティとは年齢や性別、国籍を問わず多様な人材を積極的に活用しよう、さらには多様な働き方を受け入れようという考え方のことです。ダイバーシティという考え方を取り入れることで、経済のグローバル化に対応できる人材を確保・育成できるだけでなく、労働人口の増加、生産性の向上を目指すという狙いがあります。

 

働き方改革の実現へ向けた9つの方針と19の対応策

働き方改革がどのような目的ですすめられることになったのかはおおよそおわかりいただけたかと思います。では、政府は具体的にどのようなことを検討し、どのような対応策をとろうとしているのでしょうか。政府が発表している「働き方改革実行計画(工程表)http://www.kantei.go.jp/jp/headline/pdf/20170328/02.pdf」をもとに、9つの方針と19の対応策をご紹介します。

 

*1・非正規雇用の処遇改善

  • 同一労働同一賃金などにするための法制度やガイドラインの整備
  • 非正規雇用労働者を正社員にするなど、キャリアアップの推進

 

*2・賃金引き上げと労働生産性の向上

  • 企業への賃上げの働きかけ、取引条件の改善、生産性向上への支援など、賃上げしやすい環境の整備

 

*3・長時間労働の是正

  • 法改正による時間外労働の上限規制の導入
  • 勤務間インターバル制度(勤務の終業時間と翌日の終業開始までの間を一定時間空けて休息時間を確保する制度)の導入に向けた環境の整備
  • 健康で働きやすい職場環境の整備

 

*4・柔軟な働き方がしやすい環境整備

  • 雇用型テレワーク(雇用されつつ、勤務場所や時間などにとらわれない柔軟性のある働き方)のガイドラインの刷新と導入支援
  • 非雇用型テレワーク(SOHOや在宅ワークなど)のガイドラインの刷新と働き手への支援
  • 副業や兼業の推進に向けたガイドラインの策定や、厚生労働省のモデル就業規則の改定などの環境整備

 

*5・病気の治療、子育て・介護等と仕事の両立、障害者就労の推進

  • 治療と仕事の両立に向けたトライアングル型支援などの推進
  • 子育てや介護と仕事の両立支援策の充実や活用促進
  • 障がい者などの希望や能力を活かした就労支援の推進

 

*6・外国人材の受入れ

  • 外国人材受け入れの環境整備

 

*7・女性・若者が活躍しやすい環境整備

  • 女性のリカレント教育(生涯にわたり教育と就労を繰り返し行うことを勧める教育システム)など、個人の学び直しの支援や職業訓練などの充実
  • パートタイム女性が扶養控除などの就業調整を意識しない環境整備や正社員女性の復職など多様な女性活躍の推進
  • 就職氷河期世代や若者の活躍に向けた支援や環境整備の推進

 

*8・雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の充実

  • 転職・再就職者の採用機械拡大に向けた指針の策定や、受け入れ企業支援と職業能力や職場情報の見える化
  • 給付型奨学金の創設など、誰にでもチャンスのある教育環境の整備

 

*9・高齢者の就業促進

  • 継続雇用の延長や定年を延長するための支援や、高齢者と就業先とのマッチング支援

 

残業規制やテレワークなど「働き方改革」は大企業やベンチャー企業を中心にすでに多くの企業で実際に始められており、5年後、10年後、この国の働き方は大きく変化しているかもしれません。これからは、会社に導かれるままの働き方をするのではく、一人ひとりがどんな働き方をしたいのかを考えていく必要があるでしょう。