新年度には毎年新入社員を迎え入れているという企業も多いのではないでしょうか。
新入社員は職場に新しい風を吹き込み、企業を変化させる力を秘めていますが、最初は何かと手がかかるものです。
そこで今回は、新入社員教育に役立つ「ピグマリオン効果」を利用したコミュニケーション方法をご紹介します。
新入社員は多くの場合、不安定な心理状態に置かれている
新入社員は入社直後の数か月間は大きな不安を抱えながら働いています。
研修を終えて配属された後は、右も左もわからないことだらけ。
仕事に慣れている社員から見れば些細なミスでも新入社員は大きく落ち込んでしまうこともあります。
仕事の他にも先輩・上司や取引先との人間関係の構築など、新入社員は新しい環境に慣れるので精一杯。
ただ会社にいるだけでたくさんのエネルギーを消耗している。それが多くの新人が置かれている状態です。
このような不安定な状態に置かれている新入社員は気持ちに余裕がなく、心が折れてモチベーションが低下しやすい状態にあります。これが早期退職につながっていくことも珍しくありません。
新入社員の不安を取り除き、彼らの力を引き出すためには、迎え入れる社員が彼らとの信頼関係の構築に力を注ぐ必要があります。
そんなときに役に立つのが「ピグマリオン効果」を利用したテクニックです。
【ピグマリオン効果】期待をかけるとパフォーマンスが向上する!
「ピグマリオン効果」とは、教師が学習者に期待をかけると学習者の成績が向上することを指す心理学用語です。
アメリカの教育心理学者R・ローゼンタールが1964年に提唱したもので、「人間は他者から期待されるとパフォーマンスが向上する傾向がある」ことを意味し、義務教育からビジネスまで様々な場面で応用されています。
他者から期待されることでモチベーションがアップし、自尊心が高まる経験をした社会人は多いのではないでしょうか。
新入社員は上司や先輩が自分のことをどのように評価しているかを敏感に感じとっています。
期待されていると感じている新入社員は期待に応えようと頑張りますし、期待に応えた新入社員は達成感を得て自信をつけていきます。
新入社員には「責任ある仕事」を与えよう
では、具体的にどのような行動をとれば、期待していることを表現できるのでしょうか。
それは新人に「責任ある仕事を与える」ことです。
そして、仕事の達成度に応じて「褒める」ことが重要になります。
新入社員が「自分は見られている」と感じることも同じように重要です。
普段と何か様子が違っていたり、表情が冴えなかったりするときなどに、ひと声かけてもらえるだけでも新入社員にとっては元気を取り戻すきっかけとなります。
声掛けは普段から様子を見ていなければできないことですし、新入社員もそれを理解するからこそ、自分は期待されていると感じ、信頼関係が醸成されていくのです。
【ゴーレム効果】期待をしないとパフォーマンスは低下する
「新人にそんなに期待しちゃダメでしょ」と考える人もいるかもしれません。
確かに、過度な期待は禁物です。
しかし、期待しないことそれ自体が負の効果を生み出す可能性もあります。
それは「ゴーレム効果」として知られています。
「ゴーレム効果」は、ピグマリオン効果の逆で、教師が学習者に期待しないことによって、学習者のパフォーマンスが下がることを意味しています。
上司が部下の能力、潜在能力、仕事への意志などを疑って接していると、部下の自己評価が低くなり、パフォーマンスが下がってしまう可能性があるということです。
新入社員がモチベーションを保ちづらく達成感も得にくい、例えば簡単すぎる仕事を与えたり、褒めることをせずにいたりすると、こうした状態に陥る可能性が高まります。
新入社員と信頼関係を構築していくには、仕事内容や言葉などの態度を通じて上手に期待を伝えることが重要になるのです。
新入社員が欲しいのは何よりも自信!
新入社員が欲しいのは、自分はこの会社でやっていけるという自信です。
そして、上司の役目は彼らが「安心感」を得られる職場環境を作っていくことにあります。
新入社員の潜在能力を引き出して仕事に活かしていくためにも、「ピグマリオン効果」等の知識を用いて、彼らと良い関係を構築していきましょう。