「HRテック」とは、
*人工知能(AI)
*様々なITリソース管理に役立つクラウド
*ビッグデータ解析等の最先端テクノロジー
を使い、人事業務全般の効率化とクオリティ向上を図る取組みのことです。
アメリカでは約20年前から導入が始まっていましたが、近年では世界各地でその注目度が高まっています。
日本でも、人事評価・採用・育成など人事業務全般において普及が広まっているHRテック。今回は、HRテック普及の背景と、それに伴い求められる働き方・考え方などを解説します。
HRテック普及の背景にある3つの要素
HRテックが普及している背景には、
1.スマートフォン・タブレット端末=デバイスの普及
2.クラウド型サービスの普及
3.最先端テクノロジーの普及
といった3つの要素があると考えられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.デバイスの普及で社員自身が作業できるように
これまで人事業務で使用されてきたソフトウェアは、人事担当者のみが利用することを前提に作られていました。
そのため使いづらいものが多く、社員自身が使用することはほとんどありませんでした。
しかし、スマートフォンやタブレット端末が普及してからはほとんどの社員が自身のデバイスを所持するようになり、同時に誰でも使いやすいインターフェイスサービスも次々と登場。
社員が自分のデバイスで情報収集したり、データ入力ができるようになりました。
これによって人事担当者の負担は大幅に軽減され、従来と比較してより正確なデータを素早く集めることも可能になったのです。
2.クラウド型サービスの普及でコスト・労力のカットが可能に
従来のHRテックでは、企業がソフトウェアライセンスを購入・自社にサーバーを設置することで人事データを管理する方法が主流でした。
しかし、この方法では機能のバージョンアップの際に更なる資金が必要となったり、データ移行に時間がかかったりと、コスト面・労力面ともに多くの問題が生じていました。
しかしクラウド型サービスの普及によって、初期投資を低コストに抑えることが可能になり、新機能の利用やデータ移行もスムーズに行えるようになったのです。
さらに、クラウド型サービスであれば中小企業や新企業でも容易に利用できることから、さまざまな企業で急速に導入が進むようになりました。
3.最先端テクノロジーの普及によってデータ管理が容易に
人工知能(AI)や機械学習など、今話題の最先端テクノロジーが登場、普及しつつあります。
こうした技術によって労務関係のデータ管理、書類作成などが自動化できるようになったことも、HRテック普及の大きな要因です。
また、人事データに限らず、社員・企業に関する様々なデータ収集や分析できるようになりました。
蓄積されたデータを元に企業が意思決定を下したり、将来予測に利用することも出来るようになってきています。
今後はより創造的・戦略的な業務への集中が求められる
このように、これまで人事担当者の負担になっていた運用・管理、オペレーション業務は、HRテックによって効率的に処理できるようになってきています。
とはいえ、HRテックや人工知能(AI)の登場は、あくまで人事業務効率化のための「補助的な役割を担うもの」に過ぎず、人の考えや評価、意思決定までも代替するものではありません。
むしろ、HRテックで情報収集や管理を補助してもらうぶん、そのデータを元にした「創造的で戦略的な業務」に今まで以上に集中することが求められます。
人事の具体例
*自社の経営戦略を深く理解する=自社の事業環境や組織を俯瞰する
*経営者のサポートや改善点を指摘する=より具体的な人材採用や育成方法など、人材戦略を考える
こういったことをしっかり行い、戦略実現に向けて組織を作り上げる能力が必須となるでしょう。
これが企業の経営・事業戦略を実現し、企業間競争での優位性を維持することにつながります。
「人間にしかできない仕事」とどう向き合っていくか考える
HRテックでどんなに論理的なデータや答えを導き出したとしても、その答えを元に行動し結果を出さなければ意味がありません。
人事業務を質良く、効率的にこなすには、ヒトの感情的な訴求力やコミュニケーション能力も必須です。
論理的な業務に追われる負担が減ったぶん、「人間にしかできない仕事」とどう向き合い、その能力を伸ばしていくかも、今後考えていくべき課題と言えるでしょう。