近年、政府が推進する働き方改革の流れとともに耳にすることも多くなった「ダイバーシティ」という言葉。
では、ダイバーシティとは一体どういったもので、実際の企業経営においてはどのような活事例があるのでしょうか。
今回は、そんなダイバーシティについて日産自動車の例をもとに解説してみたいと思います。
ダイバーシティとは多様な人材を活用しようとする取り組みのこと
ダイバーシティ(diversity)は、直訳すると「多様性」を意味し、ビジネスの分野においては、人々の持つ性別や国籍、障害の有無や年齢、価値観など様々な違いを受け入れようという概念であったり、多様な働き方を推進する取り組みのことを指します。
ダイバーシティという考え方はもともと1990年代にアメリカから始まったものです。
経済のグローバル化や少子高齢化が進み、多様かつ優秀な人材の確保が急がれる今日においては、以前にも増して注目されるべき存在となっています。
そして日本でも大手企業を中心に、企業力を高めるためにダイバーシティを活用する経営、いわゆるダイバーシティ・マネジメントの導入事例が見られるようになってきました。
日産自動車を例に見るダイバーシティの活用事例
日本企業でありながら1999年から2017年までレバノン人であるカルロス・ゴーン氏が社長兼CEOを務めていた日産自動車。
企業の将来を見据え、経営のトップに優秀な外国人を迎え入れるというその姿勢こそがまさにダイバーシティそのもの。
そんな日産自動車では「ダイバーシティ推進室」と呼ばれる専門の部署が設置され、様々なダイバーシティの活用が行われています。
・・具体的な数字を目標に掲げた女性の活躍促進
特に日本において、ダイバーシティの活用事例で最も多いのが女性の活躍促進です。
日産自動車では2017年までに女性管理職10%という目標を掲げ、ダイバーシティ・マネジメントを行ってきました。
そして、キャリアアドバイザーの配置や若手の女性従業員を中心に管理職候補者向けの研修といった施策を重ねた結果、2017年4月には女性の管理職比率が10.1%を突破、279名の女性管理職者のうち約30%の76名が部長クラス以上の役職に就任したことを発表したのです。
また、店舗に女性のカーライフアドバイザーや技術スタッフを配置したり、体格の小さな女性でも扱える働きやすい製造ラインの開発を行うなど、ダイバーシティを活用することにより更なる市場拡大を目指しています。
ノルウェーをはじめとする北欧諸国では、政治や企業における男女間の格差をなくすために、議員や管理職などの人員構成にあらかじめ一定の割合で女性を入れるクオータ制と呼ばれる制度があります。
日産自動車ではこのクオータ制と同じように具体的な数字を掲げることで、女性管理職者を増やすことに成功しています。確実に女性の活躍を促進するためには、こうした意識的な働きかけが必要といえるでしょう。
・・日常的な活動でダイバーシティを浸透させる
日産自動車では、今回ご紹介した女性の活躍促進の他にも、
*国籍の違う社員同士が、お互いの文化的背景の違いや働き方の違いについて学ぶ研修
*eラーニングの実施
*LGBTに関するイベントの開催
など、ダイバーシティマネージメントを積極的に行っています。
また、そのような取り組みについての様々な情報を「ダイバーシティサイト」と呼ばれる社内サイトでも共有し、日常的に社員がダイバーシティについて意識できるような環境が整っています。
このように、制度と意識、つまりソフトとハード両面での取り組みがダイバーシティ先進企業を作り出しているといえるでしょう。
社員の属性でなく結果を重視!既存の仕組みから変えよう
企業において、ダイバーシティを活用する際のポイントは「社員の属性ではなく結果を重要視する」ということです。
また、例えば女性の活躍には育休などの支援が必要な一方で、それによって活躍が阻まれるという側面もあるため、ダイバーシティの活用には制度の整備も必要となります。
社員の属性に縛られずに多様性を受け入れるためには、単なる意識改革ではなく、既存の仕組みから変えていく必要があるでしょう。